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リングキャンペーン誕生秘話


 

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 2022年7月30日


 この事業の誕生には、二つのエピソードがある。一つは、コロナが発生して間もなく、20代になったばかりの女性から相談があった。既に二人の子ども(3歳、0歳)がおり夫婦共働きで子育てをしているが、最近夫がコロナの影響で仕事が不安定になり、経済的に苦しく、そのような時に妊娠してしまった。しかし、今生むことはできないので、中絶したいが費用が一括で払えないので、分割で払える病院を紹介してほしいという相談であった。しかしそのような病院はなく、中絶費用を何とか工面するよう話したが、まだ声は幼く、必死さが伝わってきた。


 その後、彼女から何とか中絶費用は工面できたと報告があり、最初はそのことを共に喜んでいたが、果たして彼女はハッピーエンドでその後の生活を送ることができるのか?ということに気づいた。いや、これから又彼女は次の妊娠に怯えながら生活をしていくのである。そのことに気づき、避妊を男性のみに頼るのでなく、女性自身が主体的に避妊する方法はないのかということを考え、リングの費用を提供するという「リングキャンペーン」事業を思いついた。そして、先ほどの彼女にその話をすると、とても喜び、一か月後にリングキャンペーン第1号としてリングを提供した。その後、彼女からお礼の言葉とこれから安心して子育てに専念できると同時に、自分の夢実現に向けて一歩が踏み出せると明るい弾んだ声で電話があった。


 二つ目は、この事業の運営資金である。コロナ禍で日本中がマスク着用の生活をしている中で、コロナ対策として日本政府が一人10万円を支給するということがあった。その使い道は自由であり、多様な使い方がなされたと思うが、その10万円をコロナ禍で大変な思いをしている女性たちのために使って欲しいと、東京のWAN基金が女性たちから寄付を募り、その寄付の一部が本法人へ寄贈された。その頃、コロナ禍で避妊が出来ず、妊娠の不安を抱えて暮らしている女性のために、無料でリングを入れてあげたいと思っていた矢先、WAN基金をもとに県内からの寄付も募り、「リングキャンペーン」を開始することになった。


 しかし、実施に向けて一抹の不安があった。果たしてこの事業は利用されるのか、関係者の皆さんに理解されるのか、この事業は地域の保健師さんの協力がないとできない事業であり、果たして協力が得られるのか、コロナ禍で急を要する中で十分な調整をすることもできず見切り発車となってしまった。しかしいざ実施してみると、利用したいという希望者が市町村の保健師を通して数多くあり、それがマスコミで紹介されると、翌日から電話が鳴りっぱなしであった。そして、準備した資金はあっという間に底をついてしまった。


 利用した女性たちからは感謝の言葉が多数よせられ、年配の女性からもこの事業は素晴らしい事業であるとお褒めの言葉を頂いた。この事業をしてわかったことは、他に例のない全国でも初めてではないかと思われる事業でも、勇気を出して一歩踏み出せば、支援を受けた当時者が後押ししてくれるということである。そして、避妊指導も助言だけではなく、避妊をする金額も助成するという「直接支援」の大切さを改めて知ることができた。その後この事業は、2022年7月から内閣府の事業となり、リングを希望する女性たちへ資金の心配をすることもなく支援することが可能となった。


                             


 
 
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